新井紀子 「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」
最近読んだ本、その14。
久しぶりに読書にハマり、5月だけで14冊なので、ほぼ2日に1冊ペース。
それはともかく、この本はとてつもなく面白いし勉強になるし、刺激になるし、考えさせられるしと、超絶オススメです。
ITが物凄い勢いで進化し続けている現代社会において、多岐に渡って興味深い内容が満載で、面白さも相まって、頭の中での情報の処理が追いつかないレベル。
とりあえず、気になった部分をいくつかピックアップしてみます。
20ページ
本当の目的は、AIにはどこまでのことができるようになって、どうしてもできないことは何かを解明することでした。そうすれば、AI時代が到来したときに、AIに仕事を奪われないためには人間はどのような能力を持たなければならないかが自ずと明らかになるからです。
→著者の新井紀子さんが「東ロボくん」の研究をしている目的について。
是非とも知りたいですね。
36ページ
AIやロボットは「人間社会で」役立つように作られる必要があります。「役に立つとは何か」を知っているのは、人間だけです。ですから、人間がなんらかの方法で正解をAIに教えなければなりません。
→この前提、見落としがちだけど、これがなければどうにもなりません。
42ページ
写真の主役は何なのか、重要な要素はどれで、どれは重要でないのか。一枚の写真から、人間は一瞬のうちにそれらをいとも簡単に認識します。
→普段は気づきにくいけど、実は人間の持っている神秘とも言える能力。
ありがたや…
66ページ。
発明や新しい技術の登場で仕事がなくなることは、今に始まったことではありません。むしろ、人々の歴史はそれを繰り返してきたと言ってよいほどだと思います。
→ただし、これからの時代は、同様に考えて楽観視するのは非常に危険だと問題提起されています。
97ページ。
私たち人間が「単純だ」と思っている行動は、ロボットにとって単純どころか、非常に複雑なのです。
→先ほど同様、人間のとんでもない能力。
97ページ
私たちの日常は予想できないことで満ちており、さまざまな場面で、常識や柔軟性を働かせて問題を解決しなければなりません。
→これが人間にしかできない、非常に大切なこと。
157ページ
AIへの過度の期待は、違いを感じ取る感性を鈍らせてしまいます。「似ている」と「似ていない」の両方をフェアに、冷徹に見据えることなしに、まともな技術は生まれないのです。
→注意すべし。
171ページ
一を聞いて十を知る能力や応用力、柔軟性、フレームに囚われない発想力などを備えていれば、AI恐るるに足らず、ということになります。
では、現代社会に生きる私たちの多くは、AIには肩代わりできない種類の仕事を不足なくうまくやっていけるだけの読解力や常識、あるいは柔軟性や発想力を十分に備えているでしょうか。
→解決策。
しかし、果たしてそれが出来るのか。
226ページ
一に読解、二に読解、三、四は遊びで、五に算数
→「学校教育に何が必要か」という問いに対する、著者の新井紀子さんの回答。
読解力大事。
232ページ
AIに代替されない人材とはどのような能力を持った人なのでしょうか。それは、意味を理解する能力です。
→これは何においても必要。
234ページ
重要なのは、新しいソフトウェアを使いこなすことができるかどうかではないのです。その中身、使うべきポイントや弱点を論理的に理解しているか否かです。
→だからこそ、使いこなすことが出来る訳だ。
241ページ
AIと共存する社会で、多くの人々がAIにはできない仕事に従事できるような能力を身につけるための教育の喫緊の最重要課題は、中学校を卒業するまでに、中学校の教科書を読めるようにすることです。世の中には情報が溢れていますから、読解能力と意欲さえあれば、いつでもどんなことでも大抵自分で勉強できます。
→教科書を本当の意味で読めれば、大概のことは何とかなる。
逆に言えば、読めていない人が多いのが大問題。
243ページ
仕様書を正しく理解して、手順書どおりに作業をし、いわゆる「ほうれんそう(報告・連絡・相談)」がきちんとできるあたり前の人材が、いくら人事にコストをかけても採れていない
→あたり前があたり前でなくなっている。
246ページ
自分でない赤の他人が何年もかけて書いた本を理解するためには、著者が書くのに要した時間の倍はかかってあたり前だと思いませんか?
…
もしかすると、多読ではなくて、精読・深読に、なんらかのヒントがあるのかも。そんな予感めいたものを感じます。
→これは新しい視点。
263ページ
AIにできるのは、基本的に生産効率を上げることだけで、新しいサービスを生み出したり問題を解決したりはできないのです。
→これこそ、人間がやるべきこと。
275〜276ページ
魅力的な作り手の人柄、なぜその商品が「そこに在るのか」、そのストーリーに消費者は魅かれるのです。
→ビジネスについて。
本当に多岐に渡って学びがある。
276〜277ページ
「何の仕事とはっきりとは言えないけれども、人間らしい仕事」は、AIに代替されることなく、残っていくのです。
→何となくわかりそうだけど、言葉にするのが難しい…
279ページ
不合理が存在する、ということは、ビジネスチャンスがあるということです。
→なるほど。
279ページ
重要なのは柔軟になることです。人間らしく、そして生き物らしく柔軟になる。そして、AIが得意な暗記や計算に逃げずに、意味を考えることです。生活の中で、不便に感じていることや困っていることを探すのです。
→なるほどなるほど。
280ページ
これからの時代に起業するのに有利なのは男性より女性だろうと思います。一般に、男性よりも女性のほうが困っていることが多く、しかも他者との共感能力が高いからです。
→知り合いの女性の多くは、この共感能力が高い気がする。
今のうちに、サインもらっとこうかな(笑)。
281ページ
AI時代の先行きに不安を感じ、起業に関心のある方は、是非、世の中の「困ったこと」を見つけてください。そして、できない理由を探す前に、どうやったらその「困ったこと」を解決できるかを考えてください。デジタルとAIが味方にいます。小さくても、需要が供給を上回るビジネスを見つけることができたら、AI時代を生き残ることができます。そして、そのようなビジネスが増えていけば、日本も世界も、AI大恐慌を迎えることなく、生き延びることができるでしょう。
私たちが、人間にしかできないことを考え、実行に移していくことが、私たちが生き延びる唯一の方法なのです。
→ビジネス論、未来論、人間論、etc…
非常に重要。
「読解力」というのがこれほど大切な能力とは思わなんだ。
でも、言われてみれば確かに…
本などで、「常識の枠を外せ」「あたり前はあたり前ではない」といったことがキーワードになったりしますが、この本を読むと、常識は非常に重要なあると思わせられ、「あたり前」は「ありがたい」ことであり、常識を敵対視するのではなく、理解した上でそれにとらわれないのがポイントなのでは、と感じてみたり。
とにかく、一度は目を通してみて欲しい本です。
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